Ocean crossing(外洋横断)ヨット [ヨットの話題]
Riggers UK 訪問 [ヨットの話題]
Cornish Crabbers LLP 訪問 [ヨットの話題]
クラバース社のラインナップは、とても統一が取れていながらそれぞれに特徴があります。
Cornish Crabbersより待望のNewモデルデビュー [ヨットの話題]
HABER 33 Reporter 試乗 [ヨットの話題]
先日、HABER660を製造するYAHCT SERVICE社を訪問しました。
造船所はポーランドの内陸部にあり、周辺には小さな湖がたくさんあり、そのほとんどはそれぞれつながっており、キャナルを通じて果てはバルチック海までつながっています。
写真はILAWAという町にたくさん点在する湖でとったもの(午後9時過ぎ撮影)
今回の旅の目的は、YACHT SERVICE社が新たに開発したHABER33 Reporterの試乗と、HABER660のオーナーより頂いた艇に関するフィードバックを造船所担当者に届けることにありました。
(適当な日本語が思い当たりませんでしたが、オーナーは「一年目の気づき」と題して、気付いた事またはご自身で工夫された箇所などを写真付きで詳細にレポートしてくださいました。)
ポーランドに訪問するのは、これが初めてでは無いのですが、この季節にこの地を訪れるのはこれが最初でして、ポーランドの自然の美しさに改めて感動を覚えました。
残念ながらモーターボートは専門ではありませんので、HABER33 Reporterの詳細はYACHT SERVICE社ホームページをご覧いただくとして、こちらでは感想のみを述べたいと思います。
(当該ページへの行き方:上記リンクをクリック→ページ右上のイギリス国旗をクリックして英語表記に→ページ上部タブよりHABER Yachts→Motor Yachts→画面中央のHABER33 Reporter画像をクリック)
平地の多いヨーロッパの国々では、このようなキャナルボートは結構な人気があります。長い休暇を利用しキャナル(水路)を通してのんびりと湖をめぐる事ができるサイズで設計されています。
山が海に迫っていて、川の流れが急な日本では、ちょっと想像もつかないような遊び方ですね。
このHABER33 Reporterの船内は、他のHABERシリーズのコンセプトと同じく、天井まで2mもあり、また窓の総面積も大きく、船内は明るくそしてとても広々としています。
このモーターヨットの設計者であるYACHT SERVICE社代表のJanusz Konkol(ヤヌッシュ・コンコール)氏は、HABERシリーズの特徴としてこの広々と明るい船内というコンセプトをとても重要と考えているようです。
その点において、HABER33 Reporterは限りなく理想に近い物に仕上がったかと思います。
その一例として、冒頭の夕焼けの中でもキャビン内で作業が出来るくらいでした。
マヌーバビリティー(機動性、旋回性)やその他のモーターボートに求められる性能については、あまり詳しくありませんので断言できませんが、試乗した感じでは予想に反して小さい旋回半径と制動性を持っているように感じました。また、全速での旋回中も艇の姿勢は不自然な感じではなく安定しているように感じました。
ハルの形状ですが、ボトムに船体を縦断するロングキールがあり、排水量型に見えるのですが、初期復元力は高いようです。
実際、4人の大人(日本人1名[メタボ]、ポーランド人1名、オランダ人1名、ドイツ人1名とかなり重量級と思われる)が片舷に集まっても、ほとんどヒールを感じられませんでした。
現在2号艇が進水したところですが、他のHABERシリーズと同様、これからロットが増えるにつれてどんどん良いボートになっていくことを期待します。
航祐
「年寄りの冷や水」でなく熱水。 [ヨットの話題]
接水面積と抵抗について [ヨットの話題]
レーサーの皆さんは、愛艇のボートスピードについてとても敏感であると思いますが、艇速アップの為に色々努力されておられるかと思います。
しかし、実際レースとなれば船体自体をどうこうする訳にはいきませんから、その時与えられたものの範囲で艇速アップを心がける訳です。
ハルが受ける抵抗を減らすというのは、レーサーにとって大きな課題かと思います。
レース経験のある方は誰もが通った道かと思いますが、艇の姿勢をかえたりと色々試されたと思います。私自身も下級生時代は先輩に言われるがまま、前に乗ったり後に乗ったり、ヒールさせたりさせなかったりしておりました。上級生になってからも、今ひとつ理屈は理解していませんでしたが、ボートスピードがあがる状態がある事は何となく感じていました。
例えば微風時全般や中風以下の平水面でのクローズホールド(スナイプで言うとクルーがオンデッキになるぐらいでしょうか。だたしこれは私の場合つまり重量級ですので、軽いペアの場合はもう少し風が強い状態まで当てはまるかもしれません。)で、艇体を少しバウダウンのトリム(船体の前後の浮き具合)にして、接水面積を減らすなど。
当時は感覚でスピードが増えた減ったと感じておりましたが、この世界に入ってヨットについて勉強するうちに、色々と分ってきました。
今日はこのボートスピードの遅い時に接水面積を減らす効果についてお話したいと思います。
今回よりブログ『OP便り』の運営方法に変更がありまして、私『航祐』が投稿します記事は、導入のみこちらで紹介させて頂き続きは私個人のブログ『よっとでざいなーへの道』にて、詳しくお伝えする事となりました。
どうかご理解頂きますようお願い申し上げます。
航祐
STIX (2) [ヨットの話題]
3, Inversion Recovery factor (FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数
このファクターの計算式は、船体重量が40t未満の場合と40t以上で変わってきます。STIX [ヨットの話題]
その基準の一つにSTIX(Stability Index:復元力指標)と呼ばれるものがあります。
本日はそれを紹介したいと思います。
随所に計算式が出てまいりますが、それらを読み飛ばして頂いても概要は掴んでいただけるかと思います。
STIX(復元力指標)はモノハルヨットの基本的なディメンションと静復元力曲線から得られる値によって導き出されます。
それぞれの日本語訳は私が勝手に解釈したものですので、もしかすると日本語で正式な呼称があるかもしれません。
1, Base Length factor(LBS):基本長さ係数
2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数
3, Inversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
5, Displacement-length factor(FDL):排水量/長さ比係数
6, Beam-desplacement factor(FBD):幅/排水量比係数
7, Wind Moment factor(FWM):風によるモーメント係数
8, Downflooding factor(FDF):水流入機会係数
STIX計算式
STIX = (7+2.25LBS)(FDS x FIR x FKR x FDL x FBD x FWM x FDF)^0.5 + δ
※δは、艇が不沈であるか否かにより値が決まる。不沈であればδ=5、それ以外はδ=0
それぞれのファクターは計算式から成り、次に紹介しますLBS(Base Length factor)を除きそこから導き出された値が『1』の場合は、そのファクターは特に安全であるわけでもなくまた安全でない訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味します。値が高ければ高いほど、そのヨットは安全であると評価されます。
各ファクターの特徴と計算式を紹介したいのですが、長くなりそうなので何回かにわけて説明させて下さい。
1, Base Length factor (LBS):基本長さ係数
FDS = AGZ / (15.81 x √船体長)
このファクターは、ヨットが復元性もしくは海水流入の危険性に関して致命的な角度まで傾くのに必要な力の強さ(正確には仕事量の多さ)を相対的に判定します。
補足:水流入角とは、ヨットの場合下の図のように、コンパニオンウェイの上端が水につかるヒール角のこと。
ガフカッターとスループ [ヨットの話題]
先日、本桟橋を歩いていました時に、
こちら↑、Cornish Crabber 24' Gaffのバウスプリットが
同じ艇種のCornish Crabber 24' Bermuda↑の物より明らかに長い事に気づきました。
そこで、事務所に戻ってきて両艇のプラン図を見てみました。
Gaffリグはバウスプリットが長いだけでなく、メインセールのクリュー(後端)も少し後ろよりです。
Cornish Crabber 24' Gaffはイギリスの伝統的な蟹とり漁船のラインがモデルになっており、リグなども当時の物を再現する形でデザインされています。
確かに古い時代のガフリグの船をみてみますと、バウスプリットにカッターリグ、ケッチやヨールもしくはスクーナー、一本マストでもブームはトランサムより後方に飛び出していて、船の前後方向にセール面積を広げていったようです。
当時の状況を考えますと、材料的な制約で一本物で十分な強度をもつ長いマストを作るのは難しかったというのもあるでしょうが、ガフカッターなどのリグは作業船や輸送船に多くみられたというのは、他にも理由があるように思い、少し考察してみました。
対象的に現代のヨットはアスペクト比の高いリグつまり高いマストで上下に長いセールを使用しています。この方が効率、つまり発生する揚力に対して抵抗が少ない事が判明しているからです。
引用1"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
注:図中のセールはセール面積はすべて同じでアスペクト比が異なる
このグラフは縦軸にセールが風に対して垂直方向に発生する力(揚力)、横軸に風が向かう方向に平行に発生する力(抵抗)を表し、グラフ左下のαはセールからみた風の進入角(ブームと見かけの風との間の角度)です。風の進入方向は図にあるように横軸の左から縦軸に対して垂直になっています。
セールの揚力と抵抗は合成され、再び船を前進させる力(ドライビングフォース)と船をヒールさせる力(ヒーリングフォース)に分解できます。船の進行方向は図のようにクローズホールドです。この場合、ドライビングフォースは船の進行方向と平行でその方向にのびる矢印で示されており、ヒーリングフォースは船の進行方向に対して垂直にのびる矢印で表されています。
この図から分かりますように、クローズホールドでは圧倒的にアスペクト比の高いセールが有利ですね。ガフリグと比べると約2.5倍にもなります。
ただ、このアスペクト比の高いセールがすべての状況において有利という訳ではなく、見かけの風に対してのヘディング角によっては、ガフリグのようなアスペクト比の小さなセールの方がドライビングフォース(前に進む力)が大きい場合もあります。下の図にそれが示されています。
引用2"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
縦軸はドライビングフォース、横軸は見かけの風に対してのヘディング角
図から見て取れますように、ガフリグ(アスペクト比AR=1)見かけの風が70度以上ではAR=6のセールよりもドライビングフォースが大きくなっています。
整理しますとアスペクト比の高いセールはクローズホールドなど見かけの風と進行方向の角度が小さい時は有利で、逆にその角度が大きい時はガフなどのアスペクト比の低いセールがより多くのドライビングフォースを生み出すという事でした。
先ほどからたびたび登場します『見かけの風』について、少し補足させて下さい。
見かけの風というのは文字通り、航行中の船上で観測される風の方向や速度であったりしますが、それらは実際の風と船の艇速を合成したものです。
という事は、艇速が上がりますと見かけの風は強くなりまた方向も船首側にまわったように観測されます。つまり同じのぼり角度で帆走していても、速い船は遅い船より強くまた前に回ったみかけの風の中を帆走しなければなりません。
ここでもう一度、今日の話題、ガフカッターはより長いバウスプリットで前後にセール面積をとり、スループは高いマストで上下にセール面積をとっているという話題に戻ります。
昔の作業船などはガフカッターリグの船が多くみられるという話でしたが、こういった船はもちろん重排水量でしょうから最高速度も限られたでしょうし、今のレーサーみたいにがんがん上る事は皆無で、実際アビームやリーチングがほとんどだったでしょう。という事は、それらの船に求められたのは、安全性といかに多くの荷物を積んで帆走できるかであったのではないでしょうか?つまり、必要なのは大きいドライビングフォースと少ないヒールモーメントという事になります。
引用3"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
(β-λ)は見かけの風に対してのヘディング角
縦軸はドライビングフォース(左にいくほど大きい事に注意)
横軸はヒールモーメント
(β-λ)=27.5度よりも大きい場合で、セールが前後に長いリグModel Cの方がドライビングフォースも大きくそしてヒールモーメントも小さい事が分かります。つまり作業船に求められる条件に合致しています。
昔の人はこの事を知っていたのかどうか分かりませんが、実証的に認知されていたからこそこのタイプの船が多くみられたのではないでしょうか?
Cornish Crabberに興味を持って頂ける方でも、だいたいの方がのぼり角度について言及され気にかけられますが、風上に向かって帆走するレグが重要なレースに定期的に出られる方以外は特に気にする必要もないと思います。私の場合どうせ帆走するなら気持ちいい角度で楽にセーリングを楽しみたいですね。
航祐