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Ocean crossing(外洋横断)ヨット [ヨットの話題]

今月15日にオーストラリアの女子高生、Jessica Watson(ジェシカ・ワトソン)さんが最年少で単独無寄港無支援世界一周に成功しました。

詳しい経緯は、The Daily Telegraph誌および彼女の公式ウェブをみて頂くとして、先日購入した書籍『The Seaworthy Offshore Sailboat by John Vigor』の第2章に”Test Your Boat”と題しまして、自分のヨットの各部位の形状または装備品を選択肢の中から選んで、それによって自分のヨットが外洋横断に適しているかどうか評価できるということです。
著者はこのテストは25フィートから40フィートまでの一般的なヨットに当てはまるものであるが、あくまで目安の一つであって絶対的な評価をするものではないと断りを入れています。
外洋に行こうとお考えの読者は参考にしてみて下さい。

まずはハルについて、設問1~6はご自分のヨットの形状を選択支より選んで下さい。
それぞれ選択肢の下もしくは右の『( )』で囲まれた数字を足していきます。

ハルについて
1, Midsection(中央断面形状)
midsection.jpg

2, Freeboard(乾舷の高さ)
freeboard.jpg

3, Overhangs(船首、船尾の張り出し具合)
Overhangs.jpg

4, Rudder(舵形状)
Rudder.jpg
注:左から順に、アウトラダー、スケグ付き、バランスドラダー

5, Keel (キール形状)
Keel.jpg

6, Beam(ビーム)
Beam.jpg

7, 艇に設置されているスルハルの個数
1~2 (1)
3~5 (2)
5~7 (3)
8~   (4)

8, スルハルの材質
(1)
プラスティック (3)
真鍮 (4)

9, シーコックタイプ
ボールバルブ (1)
ゲートバルブ (3)
シーコック無し (4)

10, ハル材質
(0)
ファイバーグラス (1)
(1)
アルミニウム (1)
コンクリート (2)
ファイバーグラス(コア材を使用したサンドイッチ構造) (2)

11, ハルとデッキの接合部から水漏れの形跡があるか?
いいえ (1)
はい (3)

12, ハルにオズモシスの形跡があるか?
いいえ (0)
表面的なもの (5)
深刻なもの (10)

13, 固定バルクヘッドの数
3~ (1)
1~2 (3)
無し (5)

14, チェインプレート部に視覚出来るひずみがあるか?
いいえ (0)
はい (3)

15, 操舵形式
ティラー (1)
ラット (2)

16, 設問15でラットと答えた場合、エマージェンシー(緊急用)ラダーは装備していますか?
はい (0)
いいえ (3)

デッキについて
17, デッキを歩いているときまたはスクリュードライバーの柄で叩いたとき、十分な堅さを有しているように感じますか?
はい (1)
いいえ (3)

18, ハル内部にデッキフィッティングからの水漏れやその形跡があるか?
いいえ (1)
はい (2)

19, デッキフィッティングにバッキングプレート(裏当て補強)が使用されているか?
はい (1)
いいえ (3)

20, アンカーウィンドラスが装備されているか?
はい (1)
いいえ (2)

21, 係船用のチョック、クリートは十分な大きさおよび強度があるか?
はい (1)
いいえ (2)

22, アンカー用のサンプソンポストもしくは堅牢なフォアデッキクリートがあるか?
はい (1)
いいえ (2)

23, コーチルーフ前端のエッジの形状
直立の立ち上がりがある (1)
傾斜状になっている (3)

24, ガンネルまたはトーレールの高さ
20cm〜 (1)
10~20cm (2)
無し (5)

25, ハッチおよびスカイライトハッチについて
小さくて少数 (1)
小さいが多数 (2)
大きくが少数 (4)
大きくて多数 (5)

26, アンカーライン用ローラーの数
2つ (1)
1つ (2)
無し (5)

27, ブームエンドの支え方
ブームレスト (1)
トッピングリフト (1)
バックステイからつり下げる (4)
無し (5)

28, 自動操縦装置
ウィンドベーン (1)
デッキ下設置式オートパイロット (1)
コクピット設置型オートパイロット (3)
無し (5)

29, コーチルーフに設置されているポートホールの形状
Coachreef.jpg

30, コーチルーフの形状
IMG.jpg

31, スプレーフッドまたはドジャー
無し (1)
折り畳み式 (1)
固定型 (2)

コクピットについて
32, コクピットサイズ
cockpit.jpg

33, コクピットは完全に防水仕様(水が物入れやエンジンルームに入らない)か?
はい (1)
いいえ (4)

34, コクピットは自動排水か?
はい (1)
いいえ (5)

35, コクピットに水が溜まっても、船内に浸水しないよう構造になっているか?
はい (1)
いいえ (5)

36, コンパニオンウェイ入り口の形状
差し板 (1)
ヒンジ式 (3)
両方 (3)

リギンについて
37, スタンディングリギン(マスト固定用リギン:サイドステイやフォアステイなど)のワイヤー構造
1 x 19ワイヤー (1)
7 x 7ワイヤー (1)
ロッド (3)

38, スタンディングリギン材質
316ステンレス (1)
亜鉛メッキされた鉄 (1)
302/304ステンレス (2)

39, リギンターミナル形式
ノースマン式ターミナル (1)
ワイヤースプライス (1)
ローラー式スエッジ (2)
タルリットもしくはニコプレス式スリーブ (3)

40, ターンバックルの両端にトグルが付いているものをリギンの両端に使用しているか?
はい (1)
いいえ (2)
sailboat-toggle.jpg

41, ローワーシュラウドは左右2本づつあるか?
はい (1)
いいえ (2)

42, ターンバックルの形状
オープン形式(上から下までスリットが入っていて開いているもの) (1)
シリンダー式(中央にだけ小さな穴が開いているもの) (2)

43, パーマネントバックステイ
有り (1)
無し (3)

44, マスト形式
デッキ貫通式 (1)
オンデッキ式 (2)

エンジンについて
45, エンジン燃料
軽油 (1)
ガソリン (2)

46, エンジンパワー
排水量1トンにつき、4馬力以上 (1)
排水量1トンにつき、2~3馬力 (2)
それ以下 (3)

安全対策について
47, ライフライン形状
ダブルライン (1)
シングルライン (2)
無し (4)

48, バウパルピッドの有無
有り (1)
無し (2)

49, スタンプシュピット
有り (1)
無し (2)

50, 海面から船上に上がる為のはしごの有無
有り (1)
無し (2)

51, アビームより上りの角度をセーリングしている時のヘルム
微かなウェーザーヘルム (1)
ニュートラルヘルム (2)
強いウェザーヘルム (4)
リーヘルム (5)

アコモデーション(居住空間)について
52, 船内の天井までの高さ
船内をすべて屈まずに移動出来る (1)
メインキャビンおよびギャレーを屈まずに移動出来る (2)
屈まずに移動出来ない (3)

53, チャートテーブルについて
固定された専用テーブル (1)
折りたたみ式 (2)
他の用途と共用 (2)
無し (4)

54, 海図や航海用書籍の収納棚
十分にある (1)
不足である (2)

55, 船体の端から離れた位置に2つ以上バースがありそれらは;
1.93m以上のものである (1)
1.83m以上のものである (4)
無しもしくは上記以下の長さ (10)

個人の経験について
56, 自信のセーリング経験を以下からひとつ選ぶ
船長として外洋をわたった経験がある (1)
クルーとして外洋をわたった経験がある (4)
船長として沿岸クルーズの経験がある (6)
豊富なディンギー操船経験がある (7)
クルーとして沿岸クルーズの経験がある (8)
少しもしくは無し (10)

以上です。

これまでの点数を加算して頂きますと60~242ポイントの間に収まるかと思います。
ここでのテストは、あくまで一般的なものであって耐航性は他にもたくさんの要素に左右されます。
それでは、結果の点数に対応した診断を紹介します。

100ポイント以下
理論的にはあなたのヨットは外洋をわたる能力を有しています。しかし、後の章に出てくる項目もチェックし、愛艇がそれらの影響を受けないようにしましょう。もし、不安事項があれば専門のヨット鑑定士に相談しましょう。

101~130ポイント
あなたのヨットはいくらかの作業とコストを掛けこの本が推奨する基準にまでもって来られれば、おそらく外洋を渡る事が出来る耐航性のあるヨットになるでしょう。

130ポイント以上
鑑定にお金を捨てることはありません。あなたのヨットは外洋セーリングに適していません。買い替えましょう。

以上、外洋横断に適したヨット診断でした。

ちなみに冒頭の話題のJessica Watsonさんのヨット(S&S34)を分る範囲で点数を計算してみたところ100点以内に収まりそうでした。なるほど、彼女が成功した訳です(笑)

診断結果の最後の方は割と酷な言い回しになっていましたね。
ここで、ご自分の艇が130ポイント以上であっても、外洋に行くつもりが無いのであればどうって事はありません。
外洋ヨットである為には、沿岸ヨットやデーセーリングヨットが持っているたくさんの良い事(快適さ、早さ、気持ち良さ、見た目)を諦めないといけません。ですから、これは外洋セーリングの耐航性であってここで耐航性があると判断されたヨットが必ずしも優れたヨットと言う事にはならないことはお分かり頂けるかと思います。

次回は、各設問の補足および考察をしたいと思います。

航祐

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Riggers UK 訪問 [ヨットの話題]

ヨットの盛んなイギリスでは、リグを専門に扱う業者があり今回この国で一番最初にこの商売を始めたと言われてるRiggers UKにお邪魔しました。

この会社の工場はリグを扱う業者独特のもので、40フィートコンテナを二つ繋げた建物でとても驚きました。

container1.jpg
工場入り口

しかし普通に考えてみると、かれらはリギンを扱うのですからワークスペースは長さが重要になりますので、とても理にかなっていますね。

inside1.jpg
工場内部その1

inside2.jpg
工場内部その2

壁には工具類や納品前の品物等が所狭しと掛けられています。

container2.jpg
工場の反対の入り口より

手前に見えるリギン類は、70フィートケッチのものでワイヤー径は10mmです。
一見したところ、目に見える欠陥はないようですが、保険の規定で何マイル(失念しました)以上の航行もしくは7年毎に交換しないと保険がかけられないとのことでした。


70footer mast1.jpg
70フィートケッチのマスト再塗装現場

この写真をみてもスケールが分りにくいので、この会社のスタッフの一人であり私の友人でもあるBenjamin Carne氏にマストのそばに立ってもらいました。

70footer mast2.jpg

スプレッダー(右側)は彼の身長よりも長いのがわかります。

ruler.jpg
シートの長さを測る機器

弊社にも一台欲しいところです。

swage1.jpg

swage3.jpg
ワイヤー類をスウェージする機械

コンプレッサーによる油圧式で最大でワイヤー径14mmのものまでスウェージ出来ます。

最近は材料の進化が進みシートやブロック類に大きな変化が見られ、この日はそういった事を勉強させて貰いに行ったのですが、前出のベンが曰く
『リガー(リギン屋)の仕事は、コーヒを飲んでタバコを吸いその合間に仕事をする』
とのことで、ちょっと手を貸してくれと言われるがままに、気が付けばいつの間にか前出の70フィートケッチのスタンディングリギンを製作させられていて、あっという間に時間が経ち
『4時からラグビーの試合をみないといけないので、今日はこれでおしまい』
と、さっさと片付けて工場を閉めていました。(笑)

まだ、目的は達していませんので再度お邪魔する予定です。

ちなみに彼が言う程、休憩ばかりではありませんでした。
イギリス人と言えどきっちり仕事をしているようです。(念のため)

近日中に地元の造船所(Rustler Yacht)を訪問予定です。
その様子は随時エントリーしていきます。

航祐

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Cornish Crabbers LLP 訪問 [ヨットの話題]

イギリスに戻って参りました。

先日、現在建造の注文を承っておりますCrabber24' Gaffの仕様の打ち合わせ等を兼ねてCornish Crabbers LLP(コーニッシュ•クラバース エルエルピー)を訪問しました。

boats.jpg

boats in firm.jpg

以前の記事で紹介しましたように、クラバース社は英国はコーンウォール(Cornwall)地方のロック(Rock)という街にあります。

造船所からは海岸線まで徒歩5分くらいでしょうか。

oceanview.jpg

海岸には小さなボートハウスや公共のスロープ(英語ではSlipway)があり、とても安いコストでスロープが使用出来ます。

boathouse.jpg

slipway.jpg


前回と同様、工場内は建造中の艇、修理中の艇でとても活気がありました。

クラバース社が取り扱っているすべての艇種の建造が行われていましたので、順に紹介したいと思います。

まずはCrabber 17'

C17sailPlan.gif              C17_02.jpg

Crabber 17'は気軽にデイセーリングにでる為の装備がすべて揃っています。

造船所には納品を待つばかりの艇がありました。

C17 6.jpg

スプレーフッド、オーニングは標準装備です。

C17 5.jpg

ラダーとロングキールの間に船外機のスロットが見えます。
浅瀬にビーチング出来るように、センターボードとラダーはスウィング式になっています。
ラダーの後縁にラダーの延長部が見えています。

C17 4.jpg

コクピットの座席は跳ね上げるととても広々としたスペースになります。
また、ビルジポンプも設置されています。

C17 3.jpg

標準のオーニングが付属しますので前部は保管時にはドライに保つことが出来ます。

C17 2.jpg

このサイズにしては長めのティラーで風の鼓動を感じながらのセーリングは楽しそうですね。

最後に帆走風景をもう一枚。

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Shrimper 19'

S19sailPlan.gif       shrimper19_01.jpg

日本にはまだ数艇しか入って来ていませんが、欧州ではこちらのシュリンパー(Shrimper)19'がもっともポピュラーで1971年からかぞえると1000艇以上が建造されています。

造船所では数艇のシュリンパーが建造中でした。

shrimper4.jpg

インテリアのインナーハルを設置している。

shrimper3.jpg

内装の基礎が終わり、デッキとハルを合わせデッキの艤装をしている。
この艇は船内機(1GM)仕様。コクピット前方にエンジンカバーを設置する準備をしているのがわかる。

shrimper2.jpg
こちらは船外機仕様、船内機仕様よりもコクピットが広々としていますね。こちらもデッキ艤装中。

shrimper.jpg
建造が完了し、出荷をオーナーを待つシュリンパー。
オフホワイトとクリムゾンのラインがとても上品ですね。



Crabber 22'

C22sailPlan.gif     C22_01.jpg

クラバース社のラインナップは、とても統一が取れていながらそれぞれに特徴があります。

Crabber 22'の特徴は、独立したフォクスルと広いコクピット、そして幅の広いサイドデッキです。

C24 1.jpg
出荷準備がほぼ完了し、最終チェック中。

C22 1.jpg
輸送準備も完了です。

C22 3.jpg C22 2.jpg
とても歩き易そうな幅があり傾斜(キャンバー)の少ないサイドデッキ。

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ウッドウォッシュ仕上げのキャビン内装。とても明るい船内になります。
落ち着いた色調のニス仕上げもあります。

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独立したフォクスルには、バースの下にトイレがあります。

個人的にはこのCrabber 22'が一番のお気に入りなのですが日本にはいまだ未上陸です。



Crabber 24'

sailPlanCrabber24.gif   

日本では最もポピュラーなCrabber 24'です。
ミッドシップからスタンにかけてのラインがとても魅惑的でとても品があるように感じられます。

C24 3.jpg
ハルとデッキの接合中。

ツートーンカラーのハルは、オフホワイトとの組み合わせは標準仕様になりました。

クラバース社のヨットは一艇一艇注文を受けてからの建造で、オーナーの夢のヨット実現に向けて精一杯サポートしてくれます。その為、フル稼働にも関わらず建造予定が半年以上先まで埋まっています。

工場見学は随時大歓迎との事ですので、興味をお持ちの方は是非お越し下さい。

新生クラバース社のCrabber 24'は7月に日本に入荷予定です。

航祐

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Cornish Crabbersより待望のNewモデルデビュー [ヨットの話題]

1月8日より開催されておりましたロンドンボートショーにて、新しくなったCornish Crabbersより待望のNewモデルが発表されました。

plan.jpg

Cornish Crabber 26'
船体全長 :8.00m
全長 :10.00m
水線長 :7.24m
全幅 :2.76m
深さ :0.80/2.00m
排水量 :4000kg
セール面積 :44m^2
補機 :YANMAR 3YM20
Designカテゴリー B

Cabinplan.jpg


このCornish Crabber 26'の発表により、Cornish Crabbersのラインナップは17,19,22,24,26,30フィートとなり、自分のセーリングライフの形に合わせて艇が選べるようになりました。

Crabbers range.jpg

現在も開発段階ですので、仕様および価格等に変更がある場合もございますが、パンフレットもございますのでどうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

航祐


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HABER 33 Reporter 試乗 [ヨットの話題]

先日、HABER660を製造するYAHCT SERVICE社を訪問しました。

造船所はポーランドの内陸部にあり、周辺には小さな湖がたくさんあり、そのほとんどはそれぞれつながっており、キャナルを通じて果てはバルチック海までつながっています。

DSCN0141.jpg


写真はILAWAという町にたくさん点在する湖でとったもの(午後9時過ぎ撮影)

今回の旅の目的は、YACHT SERVICE社が新たに開発したHABER33 Reporterの試乗と、HABER660のオーナーより頂いた艇に関するフィードバックを造船所担当者に届けることにありました。

(適当な日本語が思い当たりませんでしたが、オーナーは「一年目の気づき」と題して、気付いた事またはご自身で工夫された箇所などを写真付きで詳細にレポートしてくださいました。)

ポーランドに訪問するのは、これが初めてでは無いのですが、この季節にこの地を訪れるのはこれが最初でして、ポーランドの自然の美しさに改めて感動を覚えました。


残念ながらモーターボートは専門ではありませんので、HABER33 Reporterの詳細はYACHT SERVICE社ホームページをご覧いただくとして、こちらでは感想のみを述べたいと思います。

(当該ページへの行き方:上記リンクをクリック→ページ右上のイギリス国旗をクリックして英語表記に→ページ上部タブよりHABER Yachts→Motor Yachts→画面中央のHABER33 Reporter画像をクリック)

reporter2.jpg

Reporter1.jpg

平地の多いヨーロッパの国々では、このようなキャナルボートは結構な人気があります。長い休暇を利用しキャナル(水路)を通してのんびりと湖をめぐる事ができるサイズで設計されています。

山が海に迫っていて、川の流れが急な日本では、ちょっと想像もつかないような遊び方ですね。


このHABER33 Reporterの船内は、他のHABERシリーズのコンセプトと同じく、天井まで2mもあり、また窓の総面積も大きく、船内は明るくそしてとても広々としています。

このモーターヨットの設計者であるYACHT SERVICE社代表のJanusz Konkol(ヤヌッシュ・コンコール)氏は、HABERシリーズの特徴としてこの広々と明るい船内というコンセプトをとても重要と考えているようです。

その点において、HABER33 Reporterは限りなく理想に近い物に仕上がったかと思います。

その一例として、冒頭の夕焼けの中でもキャビン内で作業が出来るくらいでした。


マヌーバビリティー(機動性、旋回性)やその他のモーターボートに求められる性能については、あまり詳しくありませんので断言できませんが、試乗した感じでは予想に反して小さい旋回半径と制動性を持っているように感じました。また、全速での旋回中も艇の姿勢は不自然な感じではなく安定しているように感じました。

ハルの形状ですが、ボトムに船体を縦断するロングキールがあり、排水量型に見えるのですが、初期復元力は高いようです。

実際、4人の大人(日本人1名[メタボ]、ポーランド人1名、オランダ人1名、ドイツ人1名とかなり重量級と思われる)が片舷に集まっても、ほとんどヒールを感じられませんでした。


現在2号艇が進水したところですが、他のHABERシリーズと同様、これからロットが増えるにつれてどんどん良いボートになっていくことを期待します。


航祐


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「年寄りの冷や水」でなく熱水。 [ヨットの話題]

*こんなに素晴らしいメールを戴きました。「Old Salt」からです。

           DSC00297.jpg

 野崎さま
いつもお世話になります。3月1日(日)、快晴、最高のコンデションの中、14ノットのNNWの風でクラバーはクローズリーチングからビームリーチングで7ノット(対地速度)強を記録しました。おつさん二人は興奮してはしゃいでいました。ヒール角20度強というところです。やや落とし気味のクローズホールドでも常時5ノット強で快走しました。
やはり本性がスキーヤーなのでどうしても今日のこの1本という感じで走らせることになります。ディーセーリングは現実として日本のヨットの主流なのでしょうね。ヨット遊びは人様々ですが、もやいを解く船が少ないのは残念なことです。
                 Y拝               *ご本人にご了承を戴かずに無断転用です。すいません。


沖に向かわれるYさん。                                      
 
                            DSC00298.jpg

                                           DSC00301.jpg

*そしてファイティングSailを楽しんでこられます。セーラーにとってはやはり「沖に出て、風と戯れ、波に抱かれる」
 ヨットマン冥利と言いましょうか。

                          野崎勝一 記 写真とも。


    

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接水面積と抵抗について [ヨットの話題]

レーサーの皆さんは、愛艇のボートスピードについてとても敏感であると思いますが、艇速アップの為に色々努力されておられるかと思います。

しかし、実際レースとなれば船体自体をどうこうする訳にはいきませんから、その時与えられたものの範囲で艇速アップを心がける訳です。

ハルが受ける抵抗を減らすというのは、レーサーにとって大きな課題かと思います。

レース経験のある方は誰もが通った道かと思いますが、艇の姿勢をかえたりと色々試されたと思います。私自身も下級生時代は先輩に言われるがまま、前に乗ったり後に乗ったり、ヒールさせたりさせなかったりしておりました。上級生になってからも、今ひとつ理屈は理解していませんでしたが、ボートスピードがあがる状態がある事は何となく感じていました。

例えば微風時全般や中風以下の平水面でのクローズホールド(スナイプで言うとクルーがオンデッキになるぐらいでしょうか。だたしこれは私の場合つまり重量級ですので、軽いペアの場合はもう少し風が強い状態まで当てはまるかもしれません。)で、艇体を少しバウダウンのトリム(船体の前後の浮き具合)にして、接水面積を減らすなど。

当時は感覚でスピードが増えた減ったと感じておりましたが、この世界に入ってヨットについて勉強するうちに、色々と分ってきました。

今日はこのボートスピードの遅い時に接水面積を減らす効果についてお話したいと思います。

続きはこちら

今回よりブログ『OP便り』の運営方法に変更がありまして、私『航祐』が投稿します記事は、導入のみこちらで紹介させて頂き続きは私個人のブログ『よっとでざいなーへの道』にて、詳しくお伝えする事となりました。

どうかご理解頂きますようお願い申し上げます。

航祐


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STIX (2) [ヨットの話題]

前回の続きなのですが、so-netの不具合により、うまく改行が反映されません。復旧次第、書き直しますのでご容赦下さい。

3, Inversion Recovery factor (FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数

このファクターの計算式は、船体重量が40t未満の場合と40t以上で変わってきます。
船体重量が40t未満の場合 FIR = φv / (125 - m/1600)  
船体重量が40t以上の場合 FIR = φv / 100
ただしφvは、復元力消失角、mは船体重量(kg)、FIRの値は0.4より大きく1.5未満でなければならない。 
このファクターは、ヨットが完沈状態(ヒール角180°)になってしまった状態から、元の状態に復元するしやすさを判定します。復元しやすい方がより安全であると判定します。
そしてその基準は復元力消失角にあります。復元力消失角と言いますのは、ヨットがその角度以上ヒールすると、負の復元力つまりヨットを上下反対の位置、完沈状態にもっていこうとする力が働くヒール角のことです。下の図参照
AoVS.jpg
ですから、この復元力消失角が大きければ大きい程、完沈状態になりにくいし、完沈状態から元の状態にもどる可能性が大きくなります。
さて、ではどれ程の復元力消失角をもっていればそのヨットが安全であるかの基準ですが、前回も紹介しましたように、それぞれのファクターの値が『1』であれば、そのヨットのデザインは、特に『安全である』訳でもなくまた『安全でない』訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味しますから、これが一つの基準と考えて差し支えないでしょう。ここでもう一度計算式をみて頂きたいのですが、このファクターでは船体重量が40t未満の場合と40t以上の場合で計算式が異なります。
40t以上の船体重量をもつヨットの場合、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが100°以上であれば良い事になります。
逆に、40t未満のヨットの場合、船体重量が軽くなればなるほど、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが大きくなければなりません。
例えば、5tのヨットの場合
FIR = φv / (125 - 5000/1600) = φv /121.875
となり、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが約122°以上でなければなりません。この角度が船体重量5tのヨットにおいての基準になります。
つまり、復元力消失角が122°以下であれば、値は『1』を下回り、最終的なSTIX(復元力指標)に不利な影響を及ぼします。また逆に122°以上であれば、値は『1』を上回り、STIXに有利に働きます。
船体重量が大きい船が優遇されている理由は、統計が示すように大きいヨットの復元性に関する事故が船体重量が小さいものより起こりにくいからです。
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
こちらのファクターの計算式は、より複雑ですので、まず概要の説明から。
このファクターは、半沈状態(ヒール角90°)から如何に早く元の状態に復元するかを判定します。
もちろん、早く復元する方がより安全であると言えます。
さて、計算式ですが、まずは補助係数FRを計算するところから始まります。
F= GZ90 x m / (2 x AS x HCE)
GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。
補助係数FRの分子"GZ90 x m"はヒール角90°の時のライティング(復元)モーメントを表現し、分母"2 x AS x HCE"はヒールモーメント(船を横倒しにする力)表現しています。つまり、FRの値が『1』の時二つのモーメントは釣り合い、外的な力が加わらない限りヨットは90°横倒しの状態で安定します。
FRの値が『1』より大きくなればなるほど、加速度的により早く復元します。
そしてもちろんFRの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働きます。
FKR:半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数はこの補助係数FRの値が1.5以上か未満か、また復元力消失角φvが90°未満かによって異なり、3パターンの計算式が適応されます。
FRが1.5以上の場合 FKR = 0.875 + 0.0833 x FR
FRが1.5未満の場合 FKR = 0.5 + 0.333 x FR
φ
vが90°未満の場合  FKR = 0.5
まずこの式から分かる事は、FRの値が1.5の時、FKRの値がおよそ1となることから、ここが一つの安全の基準となる事がわかります。
先ほど『Rの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働く』言いました。
しかし、上の式と『にらめっこ』していても、どのように有利なのかあまり実感がわきませんので、FRの値を横軸にFKRの値を縦軸にとってグラフにしてみました。
FKR.jpg
なるほど。FRの値が『1.5』(つまりFKRの値が『1』)より、小さい場合、FKRの値がより大きな傾きで減少していくのがわかります。
ということは、言い換えるとFRの値が『1.5』以上である事が、ノックダウンからの復元において重要であるということですね。
では、ここでもう一度FRの計算式を見てみましょう。
F= GZ90 x m / (2 x AS x HCE)
GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。
FRが大きくなる為には、
A), 計算式の分子が大きくなる
B), 計算式の分母が大きくなる
の二通りが考えられます。
つまり言い換えるとそれぞれ
A)ヒール角が90°の時の復元力を高くするもしくは船体重量を重くする。
B)セール面積を小さくするもしくはセールの効果(圧力)中心をさげてやる。
となります。
以前にも述べましたが、私個人はロングキールでクラシックな外観をもったヨットが大好きです。これを見てみると、ロングキールのガフリグ艇などはFRの値が高く出そうですね。
皆さんが、もし海に出ている時に状況が非常に悪くなって来てノックダウンが起こる可能性がでてきたときに、このFRの値を上げてやれば、たとえノックダウンしたとしても、より損害を少なく復元できる事になりますね。これは、当然皆さんご存知で実際に経験されている『A),荷物を低い位置に置き、B),セールをリーフする。』事です。
出来るだけ簡単に紹介しているつもりですが、未熟な文章ですので分かりにくい事があるかと思います。
もし何かご質問等がありましたら、メールもしくはコメント欄にてお尋ね下さい。
航祐

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STIX [ヨットの話題]

9月10日の記事『デザインカテゴリー』で話題にしましたISO 12217-2 Small craft - Stability and buoyancy assessment and categorisation(小型船舶ー復元力と浮力評価と分類)では、各カテゴリーごとに決められた基準があり、それらをパスして初めて、そのカテゴリーのヨットということで流通させる事ができます。
 
その基準の一つにSTIX(Stability Index:復元力指標)と呼ばれるものがあります。
本日はそれを紹介したいと思います。
随所に計算式が出てまいりますが、それらを読み飛ばして頂いても概要は掴んでいただけるかと思います。


STIX(復元力指標)はモノハルヨットの基本的なディメンションと静復元力曲線から得られる値によって導き出されます。

STIXには、次の8つのファクターがありそれぞれ異なった角度から安全性の度合いを評価し、最終的にそれぞれのファクターの値を計算式に代入し、求められた値によってカテゴリー分けが行われます。
それぞれの日本語訳は私が勝手に解釈したものですので、もしかすると日本語で正式な呼称があるかもしれません。
 
1, Base Length factor(LBS):基本長さ係数
2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数
3, Inversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
5, Displacement-length factor(FDL):排水量/長さ比係数
6, Beam-desplacement factor(FBD):幅/排水量比係数
7, Wind Moment factor(FWM):風によるモーメント係数
8, Downflooding factor(FDF):水流入機会係数
 
 
STIX計算式
STIX = (7+2.25LBS)(FDS x FIR x FKR x FDL x FBD x FWM x FDF)^0.5 + δ 
※δは、艇が不沈であるか否かにより値が決まる。不沈であればδ=5、それ以外はδ=0
 
それぞれのファクターは計算式から成り、次に紹介しますLBS(Base Length factor)を除きそこから導き出された値が『1』の場合は、そのファクターは特に安全であるわけでもなくまた安全でない訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味します。値が高ければ高いほど、そのヨットは安全であると評価されます。
各ファクターの特徴と計算式を紹介したいのですが、長くなりそうなので何回かにわけて説明させて下さい。
 
1, Base Length factor (LBS):基本長さ係数
LBS = (船体長+ 2x水線長)/3   このファクターは完全にヨットの長さに依存します。 艇の全長および水線長が長いほど、値の高いSTIXが導き出されます。つまり、より安全であると評価されます。 その最大の理由は、ヨットの事故に深く関わる「波の大きさと船の大きさの関係」にあります。 ヨットのサイズが大きくなれば、それに比べて波は相対的に小さくなります。 つまり、ヨットのサイズが大きいほど波による危険は軽減されるということになります。 計算式をみて頂けるとお分かりかと思いますが、このファクターLBSは、他の7つのファクターと比べて格段にSTIXの値に影響を及ぼします。   2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数


FDS = AGZ / (15.81 x √船体長)

下の図が示すようにAGZは、復元力曲線の正の部分の面積の一部(水流入角もしくは復元力消失角どちらか小さい方の角度まで。バラストを有するヨットでは、ほとんどの場合が水流入角の方が小さい。)
ただし、FDSは、0.5より大きく1.5未満でなければならない。
AGZ.jpg
復元力曲線については詳しくは以前の記事「ロングキール艇」をご参照ください。


このファクターは、ヨットが復元性もしくは海水流入の危険性に関して致命的な角度まで傾くのに必要な力の強さ(正確には仕事量の多さ)を相対的に判定します。

当然、必要な力(仕事量)が多くなるほどこのファクターにおいては安全なヨットと判定されます。  この値が高いということは、風によるものであれ、波によるものであれヨットが横倒しになり、危険な状態に陥る機会がより少ないということになります。 このファクターにおいては、軽排水量艇が有利な値を得られやすいようです。 といいますのも、ロングキール艇などの重排水量艇と比べて、軽排水量艇は同じ船体長であってもその船形のために、復元力の最大値がより小さい角度でより高い数値であらわれ、また水流入角も大きめの値になり、結果としてAGZ(計算式の分子)の値が高くなるからです。


 補足:水流入角とは、ヨットの場合下の図のように、コンパニオンウェイの上端が水につかるヒール角のこと。

downflood.jpg 平均的な水流入角は重排水量艇では、概ね110度。軽排水では120度


 

次回は、Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数とInversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数の予定です。   航祐

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ガフカッターとスループ [ヨットの話題]

先日、本桟橋を歩いていました時に、

こちら↑、Cornish Crabber 24' Gaffのバウスプリットが

同じ艇種のCornish Crabber 24' Bermuda↑の物より明らかに長い事に気づきました。

そこで、事務所に戻ってきて両艇のプラン図を見てみました。

Gaffリグはバウスプリットが長いだけでなく、メインセールのクリュー(後端)も少し後ろよりです。

Cornish Crabber 24' Gaffはイギリスの伝統的な蟹とり漁船のラインがモデルになっており、リグなども当時の物を再現する形でデザインされています。

確かに古い時代のガフリグの船をみてみますと、バウスプリットにカッターリグ、ケッチやヨールもしくはスクーナー、一本マストでもブームはトランサムより後方に飛び出していて、船の前後方向にセール面積を広げていったようです。
当時の状況を考えますと、材料的な制約で一本物で十分な強度をもつ長いマストを作るのは難しかったというのもあるでしょうが、ガフカッターなどのリグは作業船や輸送船に多くみられたというのは、他にも理由があるように思い、少し考察してみました。

対象的に現代のヨットはアスペクト比の高いリグつまり高いマストで上下に長いセールを使用しています。この方が効率、つまり発生する揚力に対して抵抗が少ない事が判明しているからです。


引用1"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
注:図中のセールはセール面積はすべて同じでアスペクト比が異なる

このグラフは縦軸にセールが風に対して垂直方向に発生する力(揚力)、横軸に風が向かう方向に平行に発生する力(抵抗)を表し、グラフ左下のαはセールからみた風の進入角(ブームと見かけの風との間の角度)です。風の進入方向は図にあるように横軸の左から縦軸に対して垂直になっています。
セールの揚力と抵抗は合成され、再び船を前進させる力(ドライビングフォース)と船をヒールさせる力(ヒーリングフォース)に分解できます。船の進行方向は図のようにクローズホールドです。この場合、ドライビングフォースは船の進行方向と平行でその方向にのびる矢印で示されており、ヒーリングフォースは船の進行方向に対して垂直にのびる矢印で表されています。
この図から分かりますように、クローズホールドでは圧倒的にアスペクト比の高いセールが有利ですね。ガフリグと比べると約2.5倍にもなります。

ただ、このアスペクト比の高いセールがすべての状況において有利という訳ではなく、見かけの風に対してのヘディング角によっては、ガフリグのようなアスペクト比の小さなセールの方がドライビングフォース(前に進む力)が大きい場合もあります。下の図にそれが示されています。


引用2"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
縦軸はドライビングフォース、横軸は見かけの風に対してのヘディング角

図から見て取れますように、ガフリグ(アスペクト比AR=1)見かけの風が70度以上ではAR=6のセールよりもドライビングフォースが大きくなっています。
整理しますとアスペクト比の高いセールはクローズホールドなど見かけの風と進行方向の角度が小さい時は有利で、逆にその角度が大きい時はガフなどのアスペクト比の低いセールがより多くのドライビングフォースを生み出すという事でした。

先ほどからたびたび登場します『見かけの風』について、少し補足させて下さい。
見かけの風というのは文字通り、航行中の船上で観測される風の方向や速度であったりしますが、それらは実際の風と船の艇速を合成したものです。
という事は、艇速が上がりますと見かけの風は強くなりまた方向も船首側にまわったように観測されます。つまり同じのぼり角度で帆走していても、速い船は遅い船より強くまた前に回ったみかけの風の中を帆走しなければなりません。

ここでもう一度、今日の話題、ガフカッターはより長いバウスプリットで前後にセール面積をとり、スループは高いマストで上下にセール面積をとっているという話題に戻ります。

昔の作業船などはガフカッターリグの船が多くみられるという話でしたが、こういった船はもちろん重排水量でしょうから最高速度も限られたでしょうし、今のレーサーみたいにがんがん上る事は皆無で、実際アビームやリーチングがほとんどだったでしょう。という事は、それらの船に求められたのは、安全性といかに多くの荷物を積んで帆走できるかであったのではないでしょうか?つまり、必要なのは大きいドライビングフォースと少ないヒールモーメントという事になります。


引用3"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
(β-λ)は見かけの風に対してのヘディング角
縦軸はドライビングフォース(左にいくほど大きい事に注意)
横軸はヒールモーメント

(β-λ)=27.5度よりも大きい場合で、セールが前後に長いリグModel Cの方がドライビングフォースも大きくそしてヒールモーメントも小さい事が分かります。つまり作業船に求められる条件に合致しています。
昔の人はこの事を知っていたのかどうか分かりませんが、実証的に認知されていたからこそこのタイプの船が多くみられたのではないでしょうか?

Cornish Crabberに興味を持って頂ける方でも、だいたいの方がのぼり角度について言及され気にかけられますが、風上に向かって帆走するレグが重要なレースに定期的に出られる方以外は特に気にする必要もないと思います。私の場合どうせ帆走するなら気持ちいい角度で楽にセーリングを楽しみたいですね。

航祐


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