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STIX [ヨットの話題]

9月10日の記事『デザインカテゴリー』で話題にしましたISO 12217-2 Small craft - Stability and buoyancy assessment and categorisation(小型船舶ー復元力と浮力評価と分類)では、各カテゴリーごとに決められた基準があり、それらをパスして初めて、そのカテゴリーのヨットということで流通させる事ができます。
 
その基準の一つにSTIX(Stability Index:復元力指標)と呼ばれるものがあります。
本日はそれを紹介したいと思います。
随所に計算式が出てまいりますが、それらを読み飛ばして頂いても概要は掴んでいただけるかと思います。


STIX(復元力指標)はモノハルヨットの基本的なディメンションと静復元力曲線から得られる値によって導き出されます。

STIXには、次の8つのファクターがありそれぞれ異なった角度から安全性の度合いを評価し、最終的にそれぞれのファクターの値を計算式に代入し、求められた値によってカテゴリー分けが行われます。
それぞれの日本語訳は私が勝手に解釈したものですので、もしかすると日本語で正式な呼称があるかもしれません。
 
1, Base Length factor(LBS):基本長さ係数
2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数
3, Inversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
5, Displacement-length factor(FDL):排水量/長さ比係数
6, Beam-desplacement factor(FBD):幅/排水量比係数
7, Wind Moment factor(FWM):風によるモーメント係数
8, Downflooding factor(FDF):水流入機会係数
 
 
STIX計算式
STIX = (7+2.25LBS)(FDS x FIR x FKR x FDL x FBD x FWM x FDF)^0.5 + δ 
※δは、艇が不沈であるか否かにより値が決まる。不沈であればδ=5、それ以外はδ=0
 
それぞれのファクターは計算式から成り、次に紹介しますLBS(Base Length factor)を除きそこから導き出された値が『1』の場合は、そのファクターは特に安全であるわけでもなくまた安全でない訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味します。値が高ければ高いほど、そのヨットは安全であると評価されます。
各ファクターの特徴と計算式を紹介したいのですが、長くなりそうなので何回かにわけて説明させて下さい。
 
1, Base Length factor (LBS):基本長さ係数
LBS = (船体長+ 2x水線長)/3   このファクターは完全にヨットの長さに依存します。 艇の全長および水線長が長いほど、値の高いSTIXが導き出されます。つまり、より安全であると評価されます。 その最大の理由は、ヨットの事故に深く関わる「波の大きさと船の大きさの関係」にあります。 ヨットのサイズが大きくなれば、それに比べて波は相対的に小さくなります。 つまり、ヨットのサイズが大きいほど波による危険は軽減されるということになります。 計算式をみて頂けるとお分かりかと思いますが、このファクターLBSは、他の7つのファクターと比べて格段にSTIXの値に影響を及ぼします。   2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数


FDS = AGZ / (15.81 x √船体長)

下の図が示すようにAGZは、復元力曲線の正の部分の面積の一部(水流入角もしくは復元力消失角どちらか小さい方の角度まで。バラストを有するヨットでは、ほとんどの場合が水流入角の方が小さい。)
ただし、FDSは、0.5より大きく1.5未満でなければならない。
AGZ.jpg
復元力曲線については詳しくは以前の記事「ロングキール艇」をご参照ください。


このファクターは、ヨットが復元性もしくは海水流入の危険性に関して致命的な角度まで傾くのに必要な力の強さ(正確には仕事量の多さ)を相対的に判定します。

当然、必要な力(仕事量)が多くなるほどこのファクターにおいては安全なヨットと判定されます。  この値が高いということは、風によるものであれ、波によるものであれヨットが横倒しになり、危険な状態に陥る機会がより少ないということになります。 このファクターにおいては、軽排水量艇が有利な値を得られやすいようです。 といいますのも、ロングキール艇などの重排水量艇と比べて、軽排水量艇は同じ船体長であってもその船形のために、復元力の最大値がより小さい角度でより高い数値であらわれ、また水流入角も大きめの値になり、結果としてAGZ(計算式の分子)の値が高くなるからです。


 補足:水流入角とは、ヨットの場合下の図のように、コンパニオンウェイの上端が水につかるヒール角のこと。

downflood.jpg 平均的な水流入角は重排水量艇では、概ね110度。軽排水では120度


 

次回は、Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数とInversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数の予定です。   航祐

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2008年2月9日 土曜日STIX (2) ブログトップ

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