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STIX (2) [ヨットの話題]

前回の続きなのですが、so-netの不具合により、うまく改行が反映されません。復旧次第、書き直しますのでご容赦下さい。

3, Inversion Recovery factor (FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数

このファクターの計算式は、船体重量が40t未満の場合と40t以上で変わってきます。
船体重量が40t未満の場合 FIR = φv / (125 - m/1600)  
船体重量が40t以上の場合 FIR = φv / 100
ただしφvは、復元力消失角、mは船体重量(kg)、FIRの値は0.4より大きく1.5未満でなければならない。 
このファクターは、ヨットが完沈状態(ヒール角180°)になってしまった状態から、元の状態に復元するしやすさを判定します。復元しやすい方がより安全であると判定します。
そしてその基準は復元力消失角にあります。復元力消失角と言いますのは、ヨットがその角度以上ヒールすると、負の復元力つまりヨットを上下反対の位置、完沈状態にもっていこうとする力が働くヒール角のことです。下の図参照
AoVS.jpg
ですから、この復元力消失角が大きければ大きい程、完沈状態になりにくいし、完沈状態から元の状態にもどる可能性が大きくなります。
さて、ではどれ程の復元力消失角をもっていればそのヨットが安全であるかの基準ですが、前回も紹介しましたように、それぞれのファクターの値が『1』であれば、そのヨットのデザインは、特に『安全である』訳でもなくまた『安全でない』訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味しますから、これが一つの基準と考えて差し支えないでしょう。ここでもう一度計算式をみて頂きたいのですが、このファクターでは船体重量が40t未満の場合と40t以上の場合で計算式が異なります。
40t以上の船体重量をもつヨットの場合、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが100°以上であれば良い事になります。
逆に、40t未満のヨットの場合、船体重量が軽くなればなるほど、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが大きくなければなりません。
例えば、5tのヨットの場合
FIR = φv / (125 - 5000/1600) = φv /121.875
となり、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが約122°以上でなければなりません。この角度が船体重量5tのヨットにおいての基準になります。
つまり、復元力消失角が122°以下であれば、値は『1』を下回り、最終的なSTIX(復元力指標)に不利な影響を及ぼします。また逆に122°以上であれば、値は『1』を上回り、STIXに有利に働きます。
船体重量が大きい船が優遇されている理由は、統計が示すように大きいヨットの復元性に関する事故が船体重量が小さいものより起こりにくいからです。
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
こちらのファクターの計算式は、より複雑ですので、まず概要の説明から。
このファクターは、半沈状態(ヒール角90°)から如何に早く元の状態に復元するかを判定します。
もちろん、早く復元する方がより安全であると言えます。
さて、計算式ですが、まずは補助係数FRを計算するところから始まります。
F= GZ90 x m / (2 x AS x HCE)
GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。
補助係数FRの分子"GZ90 x m"はヒール角90°の時のライティング(復元)モーメントを表現し、分母"2 x AS x HCE"はヒールモーメント(船を横倒しにする力)表現しています。つまり、FRの値が『1』の時二つのモーメントは釣り合い、外的な力が加わらない限りヨットは90°横倒しの状態で安定します。
FRの値が『1』より大きくなればなるほど、加速度的により早く復元します。
そしてもちろんFRの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働きます。
FKR:半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数はこの補助係数FRの値が1.5以上か未満か、また復元力消失角φvが90°未満かによって異なり、3パターンの計算式が適応されます。
FRが1.5以上の場合 FKR = 0.875 + 0.0833 x FR
FRが1.5未満の場合 FKR = 0.5 + 0.333 x FR
φ
vが90°未満の場合  FKR = 0.5
まずこの式から分かる事は、FRの値が1.5の時、FKRの値がおよそ1となることから、ここが一つの安全の基準となる事がわかります。
先ほど『Rの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働く』言いました。
しかし、上の式と『にらめっこ』していても、どのように有利なのかあまり実感がわきませんので、FRの値を横軸にFKRの値を縦軸にとってグラフにしてみました。
FKR.jpg
なるほど。FRの値が『1.5』(つまりFKRの値が『1』)より、小さい場合、FKRの値がより大きな傾きで減少していくのがわかります。
ということは、言い換えるとFRの値が『1.5』以上である事が、ノックダウンからの復元において重要であるということですね。
では、ここでもう一度FRの計算式を見てみましょう。
F= GZ90 x m / (2 x AS x HCE)
GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。
FRが大きくなる為には、
A), 計算式の分子が大きくなる
B), 計算式の分母が大きくなる
の二通りが考えられます。
つまり言い換えるとそれぞれ
A)ヒール角が90°の時の復元力を高くするもしくは船体重量を重くする。
B)セール面積を小さくするもしくはセールの効果(圧力)中心をさげてやる。
となります。
以前にも述べましたが、私個人はロングキールでクラシックな外観をもったヨットが大好きです。これを見てみると、ロングキールのガフリグ艇などはFRの値が高く出そうですね。
皆さんが、もし海に出ている時に状況が非常に悪くなって来てノックダウンが起こる可能性がでてきたときに、このFRの値を上げてやれば、たとえノックダウンしたとしても、より損害を少なく復元できる事になりますね。これは、当然皆さんご存知で実際に経験されている『A),荷物を低い位置に置き、B),セールをリーフする。』事です。
出来るだけ簡単に紹介しているつもりですが、未熟な文章ですので分かりにくい事があるかと思います。
もし何かご質問等がありましたら、メールもしくはコメント欄にてお尋ね下さい。
航祐

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